私を創った言葉A

「高橋和巳」全集より〜

人間は、なにをしてもよかったのだ。自尊心さえ滅ぼせば・・・
「心だにまことあらば」人の行いはすべて美しい。
人が社会に対しても自己に対しても、<月の愛情>をもって対するようになるには、 日々、つまらぬ交際や行事や習慣に明け暮れるおびただしい苦労をへねばならない。
泣き顔が涙を生むように、しめった言葉が感傷を生む・・
知らねばならぬことは山ほどあり、生きてゆくためには、知らぬほうがよい知識もまた山ほどあるのだから。
幸、不幸も、苦悩も愉悦も、そして生甲斐なるあの無定形の価値も、おそらくは味噌汁の 香りや、食器の触れる音のうちから生まれるのだろう。 そしてもし本当にそれがあるのなら、狭い生活圏の中に埋もれてもいいのだ・・・
美意識のあり方によって、その人が到達している境地がわかる。